2. 展開公式

1章では、各辺の正常/故障のパターンをすべて調べることによってネットワーク信頼度Rel(G)を計算した。 しかし、このやりかたでは、辺数をmとして、2m通りのパターンを調べる必要があり、 もう少し規模の大きいネットワークに対して計算しようとするとかなりの労力を必要とすることになる。 もう少し頭の良い計算法はないだろうか?

ネットワークのある特定の1辺に着目してみよう。 どの辺でもよいが、例えば、e1に着目してみる。

この辺、e1は、正常に機能するか、もしくは、故障しているか、どちらかである。 確率pで前者、確率(1−p)で後者が起こることになる。

このとき、

とすると、

Rel(G) = p×P1+(1-p)×P2

と計算できるはずである。 そこで、このP1とP2について考えてみよう。

まず、P2の方を考えてみる。 これは、辺e1が故障しているという条件下でネットワークが機能する確率である。 このとき、辺e1は故障しているのだから、この辺は取り除いてしまい、 次の右側のようなネットワークを考えても同じである。

このe1を取り除いたネットワークをG2と名付ければ、 P2=Rel(G2) と書くことができることになる。

それでは、P1の方はどうだろうか。 こちらは、辺e1が正常に機能しているという条件下でネットワークが機能する確率である。つまり、辺e1は必ずその両端点v1とv2を(故障することなく)つないでいる。 ということは、下の図のように、e1を縮め、v1とv2を一つのノードにしてしまったのと同じことになるはずである。

つまり、図の右側のネットワークをG1と書けば、 P1=Rel(G1) となるわけである。

以上をまとめてみると、Rel(G)=p・Rel(G1)+(1−p)・Rel(G2)、つまり、

のような公式で計算することができるということである。 右辺に現れるネットワークにも同じ公式を次々と適用していくことによって、 例えば次のように計算できる。

(まず赤い辺に公式を適用し、次に緑の2辺に適用し、次に水色の2辺に適用している。)

ここまで計算すると、

という簡単な計算を用いれば、

Rel(G)=p[p(1-(1-p)3) + (1-p){p(1-(1-p)2)+(1-p)・0]
                  +(1-p)[p{p(1-(1-p)2)+(1-p)p2}+(1-p)・0]
          =4p5−11p4+8p3

と計算することができる。

(注)
この展開公式においては、どの辺に注目して展開しても同じ結果になる。


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