下図のようなネットワークGがあったとしよう。
このネットワークは、コンピュータやサーバを結ぶ回線のネットワークと思ってもよいし、または、道路のネットワークと思ってもよい。
現在、このネットワークでは、4つのノードが5つの辺で結ばれていて、 どの2つのノードに対しても、うまく経路を選べばその2つのノードをつなくことができるようになっている。 例えば、v1とv4であれば、 e1−e5やe2−e3−e5などの経路を辿ってつなぐことができている。 つまり、コンピュータのネットワークであれば、どの2つの間でも通信を行なうことができるし、道路ネットワークであれば、どの2点間も行き来出来る状態になっている、ということであり、ネットワークが正常に機能している状態であるということができる。
しかし、今仮に、2つの辺e1とe2が(回線が切れた、道路工事などの理由で)故障してしまったとしよう。
すると、例えば、v1とv3をつなぐ経路はなくなってしまい、 通信(もしくは行き来)ができなくなってしまう。 つまり、ネットワークとして正常に機能できないことになってしまう。
一方、同じ2つの辺の故障でも、故障した辺がe1とe3であれば、 どの2ノード間でも通信できることが確認できるだろう。
それでは、各辺の故障確率が分かっているとして、このネットワークが正常に機能する状態である確率がどのくらいになるのか、計算してみよう。
簡単のため、各辺は同じ確率(1−p)で故障するものとしよう。 つまり、各辺は確率pで正常に機能し、確率(1−p)で故障する。 5辺の正常/故障のパターンをすべて列挙してみると、下のようになる。 (「○」は正常、「×」は故障を表している。)
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ここで、ネットワークが連結になるパターンの確率をすべて足し合わせれば、 ネットワークが正常に機能する確率Rel(G)を計算することができる。つまり、
Rel(G)=
1×p5 + 5×p4(1−p) + 8×p3(1−p)2 + 0×p2(1−p)3 + 0×p(1−p)4 + 0×(1−p)5
= 4p5 − 11p4 + 8p3
が求める確率ということになる。 例えば、p=0.9の場合には、この確率は約0.977となる。
この、ネットワークが正常に機能する確率、つまり、 ネットワークが連結になる確率は、ネットワーク信頼度(network reliability)と呼ばれている。 これは、このネットワークが、各辺の故障に関してどの程度頑健であるかを見る尺度である。
上では簡単のためにすべての辺の故障確率をpにしているが、 一般にはそれぞれの故障確率は異なる値を与えることができる。 上でやったようにすべての辺の故障確率をpとすると、ネットワーク信頼度はpの多項式になる。 この多項式は、信頼度多項式(reliability polynomial)と呼ばれている。
(注)
ここでは、任意の2ノード間で通信が可能であることをネットワークが正常であることとしたが、
この場合のネットワーク信頼度は正確には、「全端点信頼度」(all-terminal reliability)
と呼ばれるものである。
特定の2ノード間で通信ができればよい(2-terminal reliability)、とか、
特定のkノード間で通信ができればよい(k-terminal reliability)、
などのバリエーションもある。
また、各辺における通信に方向が定まっているようなバリエーションもある。