1. ネットワークの信頼度を計算しよう

下図のようなネットワークGがあったとしよう。

このネットワークは、コンピュータやサーバを結ぶ回線のネットワークと思ってもよいし、または、道路のネットワークと思ってもよい。

現在、このネットワークでは、4つのノードが5つの辺で結ばれていて、 どの2つのノードに対しても、うまく経路を選べばその2つのノードをつなくことができるようになっている。 例えば、v1とv4であれば、 e1−e5やe2−e3−e5などの経路を辿ってつなぐことができている。 つまり、コンピュータのネットワークであれば、どの2つの間でも通信を行なうことができるし、道路ネットワークであれば、どの2点間も行き来出来る状態になっている、ということであり、ネットワークが正常に機能している状態であるということができる。

しかし、今仮に、2つの辺e1とe2が(回線が切れた、道路工事などの理由で)故障してしまったとしよう。

すると、例えば、v1とv3をつなぐ経路はなくなってしまい、 通信(もしくは行き来)ができなくなってしまう。 つまり、ネットワークとして正常に機能できないことになってしまう。

一方、同じ2つの辺の故障でも、故障した辺がe1とe3であれば、 どの2ノード間でも通信できることが確認できるだろう。

それでは、各辺の故障確率が分かっているとして、このネットワークが正常に機能する状態である確率がどのくらいになるのか、計算してみよう。

簡単のため、各辺は同じ確率(1−p)で故障するものとしよう。 つまり、各辺は確率pで正常に機能し、確率(1−p)で故障する。 5辺の正常/故障のパターンをすべて列挙してみると、下のようになる。 (「○」は正常、「×」は故障を表している。)

e1e2e3e4e5起こる確率ネットワークの状態
p5正常(連結)
×p4(1−p)正常(連結)
×p4(1−p)正常(連結)
×p4(1−p)正常(連結)
×p4(1−p)正常(連結)
×p4(1−p)正常(連結)
××p3(1−p)2故障(非連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2正常(連結)
××p3(1−p)2故障(非連結)
e1e2e3e4e5起こる確率ネットワークの状態
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
×××p2(1−p)3故障(非連結)
××××p(1−p)4故障(非連結)
××××p(1−p)4故障(非連結)
××××p(1−p)4故障(非連結)
××××p(1−p)4故障(非連結)
××××p(1−p)4故障(非連結)
×××××(1−p)5故障(非連結)

ここで、ネットワークが連結になるパターンの確率をすべて足し合わせれば、 ネットワークが正常に機能する確率Rel(G)を計算することができる。つまり、

Rel(G)= 1×p5 + 5×p4(1−p) + 8×p3(1−p)2 + 0×p2(1−p)3 + 0×p(1−p)4 + 0×(1−p)5
= 4p5 − 11p4 + 8p3

が求める確率ということになる。 例えば、p=0.9の場合には、この確率は約0.977となる。

この、ネットワークが正常に機能する確率、つまり、 ネットワークが連結になる確率は、ネットワーク信頼度(network reliability)と呼ばれている。 これは、このネットワークが、各辺の故障に関してどの程度頑健であるかを見る尺度である。

上では簡単のためにすべての辺の故障確率をpにしているが、 一般にはそれぞれの故障確率は異なる値を与えることができる。 上でやったようにすべての辺の故障確率をpとすると、ネットワーク信頼度はpの多項式になる。 この多項式は、信頼度多項式(reliability polynomial)と呼ばれている。

(注)
ここでは、任意の2ノード間で通信が可能であることをネットワークが正常であることとしたが、 この場合のネットワーク信頼度は正確には、「全端点信頼度」(all-terminal reliability) と呼ばれるものである。 特定の2ノード間で通信ができればよい(2-terminal reliability)、とか、 特定のkノード間で通信ができればよい(k-terminal reliability)、 などのバリエーションもある。 また、各辺における通信に方向が定まっているようなバリエーションもある。


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