筑波大学応用確率システム研究室(Applied Stochastic Systems Lab.)

研究内容

資源共有型システムの確率モデル

世の中のサービスシステムではほとんどは資源共有型である.我々の日常生活では道路・電車・バス等よく使いますが,これらは不特定多数のユーザがそれらの資源を共有して使っています.また,レストラン・図書館・遊園地等も同様です.これらのサービスを快適に使うために考える必要があります.例えば,大学の図書館では椅子の数が教職員と学生の合計の数よりもはるかに少ないですが,図書館へ行って椅子がなく勉強できないことがあまりありません.そこで,ある人が百回図書館を訪問する場合,一回くらい空き椅子がないようにするために何個の椅子を用意すればよいかを数学的に答えるのは待ち行列理論です.我々は待ち行列理論の深化とその応用を探求し,様々な研究をしてきました.特に顧客の行動(再試行挙動・途中放棄)を取り入れたモデルを新たに提案して解析を行っています.また顧客の戦略的な行動を取り入れたモデルの解析に興味を持っています.

時代によって,サービスの形態が変わりますが,我々はそれぞれの本質を捉えた数理モデルを厳密に解析しシステムの設計の基準の提供のみならず,理論的に貢献しています.例えば,近年クラウドサービスが盛んになって,それを支えるデーターセンターが大量の電力を消費しています.我々は省エネ型データーセンターに着目しいくつかの待ち行列モデルを提案し,厳密な解析を行っています.また,第5世代無線通信(5G)システムやコグニティブ無線システム等にも着目し,新たなモデルを提案し解析を行っています.さらに,Software-Defined Networking (SDN)等のネットワークイノベーションにも着目して解析を行っています.現在,AI・IoTやサイバーフィジカルシステムの活用が期待される超スマート社会において,様々な新サービスの可能性が秘めています.そのようなサービスをいち早く数理モデルによる分析を行い,実現することも非常に面白くかつ重要な課題だと認識しています.

近年シェアリングエコノミーが非常に発展していて新しい資源共有型サービスが登場しています.我々はそれに注目して本質的な要素を取り出し,新しいサービスの提案とその数理モデルの解析を行っています.また,ものの資源はもちろんたくさんありますが,近年社会的な問題の一つとして人手不足が取り上げられています.実は物の資源が何とか増やすことができますが,人の資源はそう簡単ではありません.したがって,人の資源の有効活用は何よりも重要です.我々はこの問題に着目して研究しています.一つの例として物流システムの再配達問題に着目して顧客参加型サービスのモデル化と解析を行っています.

応用確率過程

上記の資源共有型サービスの数学モデルとして確率過程が使われます.しかし,これらの確率過程は何も特徴がないわけではなく問題によって様々な特殊な形をしています.これらの形を見つめて,一般的な枠組みの解法よりも綺麗にかつ効率的な解き方が存在する場合がありますのでそれぞれ創意と工夫の余地があります.また,これらの確率過程が実際のシステムから得られますので,確率過程のある操作(例えば極限)をとるときに実際のシステムでは何をすることに相当するのかを考えながら行う必要があります.そのため,システムと数学の両方のセンスが必要です.

また,近年深層学習を代表する機械学習技術は飛躍的に発展して,産業への応用も非常に注目されています.しかし,これらのシステムの確率的な振る舞いは理論的にまだわからないことが多いといわれています.我々は機械学習を使ったシステムのモデル化や機械学習システムの理論的な解析に興味を持っています.

今日のシステムの複雑度が増しており従来の待ち行列理論が適用できる範囲を超えています.具体的にはこれらのシステムを解析するためには多次元確率過程の解析が必要となります.我々は多次元確率過程の漸近解析(流体極限や拡散極限)を行って,システムの振る舞いを部分的に厳密な理解を目指します.

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