Kleinschmidt & Onn (1996) は,partitionabilityの自然な 拡張概念としてsignabilityという概念を定義し,マトロイド 多面体や球面多面体がsignableであることを示している.ま た,Onn (1997)は,strong signabilityという,recursiveな 定義も導入している. 今回は,このsignabilityという概念がshellabilityとどのよ うな関係にあるかを議論する.
この発表では、Paul Strokan (St.Persburg State University)氏との 共同研究の一つである、戦略型ゲームにおけるナッシュ均衡解の 形成問題を認識的構造の側面からの研究を取り上げる。 論文の目的は、混合ナッシュ均衡解に収束するベイズ型コミュニケーション- モデルを提示し、混合ナッシュ均衡解に認知論的意味付けを与えることにある。 今、任意の戦略型ゲームを考える。「状態空間」と呼ぶ有限集合の部分集合を 「事象」という。各プレイヤーは各自の「個人情報」を表現する数学的構造と して、状態空間上の分割(「個人情報分割」)を持つとする。 また、彼等がゲーム的事象を認識する機構として「p-信念システム」を用いる とする。即ち、全てのプレイヤーは状態空間上での共通の確率測度を採用し、 プレイヤーが``事象 E を「p-信念構造」により認識する"ということを、 個人情報分割の下での事象 E の条件付確率値が p ( 0 < p < 1)以上 になることを意味することにする。 更に、各プレイヤーは自分以外のプレイヤーの行動を自分の情報分割の下 での条件付確率値として「予想」し、それをp-信念構造により認識するもの とする。 このとき、n 人のプレイヤー (1, 2, ...., n)間での「ベイズ型情報伝達過程」 を以下のように導入する:最初にプレイヤー1が他のプレイヤーの行動予想値 を隣のプレイヤー 2 に伝える。プレイヤー 2 はこの情報をもとに自分の 情報分割を細分し、この新しい情報分割の下で新たに他のプレイヤーの行動 予測値を修正する。そしてその値を次のプレイヤー 3 に伝達する。これを受け たプレイヤー 3 は自分の情報分割を細分し、新たに他のプレイヤーの行動予想 修正し、その値を次のプレイヤー 4 に伝達する。最後にプレイヤー n は行動予 想の修正値をプレイヤー 1 に伝達する。このような操作を何回も繰り返し行う ことで、プレイヤー行動予想の修正により「プレイヤー行動予想に関する 確率過程」が得られる。 以上の設定のもとで、次の結果を得る: 定理:戦略型ゲームにおいて、上記のベイズ型情報伝達過程を考える。 これで得られるプレイヤー行動予想に関する確率過程は必ずこのゲームの 混合ナッシュ均衡解に収束する。 この定理の主張において、次の3点に注意する。 (1) 行動予想の情報の受け取り手であるプレイヤーは、その情報は必ずしも 正確なものではなく、多少の誤差を含んでいるものと考えていること。 (2) 情報伝達を行うプレイヤー達は情報伝達の方向によりグラフを形成するが、 ナッシュ均衡解に収束することと、そのグラフの位相的性質とは無関係である こと。 (3) ナッシュ均衡形成過程において、ゲームの構造等の共有知識に関する アプリオリな仮定を設けていないこと。
有向マトロイドの正(コ)サーキットのクラッターは、有向グラフの 有向サイクルや有向カットのクラッター達を真に含むクラッターの 重要なクラスの一つです。 今回の発表では、ランクが4以下の有向マトロイドの 正コサーキットのクラッターについて、そのPacking Propertyと Ideal-nessの禁止マイナーによる特徴づけについてお話しします。 なお、この研究は柏原賢二氏(東京大学)との共同研究です。
(当日使われたプロジェクタ用資料:PDFファイル)
協力ゲームにおけるプレイヤーの意思決定は,提携に参加するか否 かの二者択一な場合を扱っている.Bilbao(2000)は,協力ゲームでの プレイヤーの意思決定を拡張し,提携に参加する,参加しない,どち らでもないかの三者択一な状況を考える双協力ゲームを提案した. 本発表では,双協力ゲームを紹介し,双協力ゲームにおけるShapley値 (2004)等をLattice上で解説する.
アルファベット A={1,2,3}による自由モノイド上の準同型写像を, "階数3の記号変換(Substitution)" と呼ぶ.例えば σ(1)=12,σ(2)=13,σ(3)=1 で定義された3次記号変換σ(この記号変換は, Rauzy記号変換と呼ばれている)はシンプルだが, さまざまな産物を生み出す. 今回はその産物のなかで興味深いトピックスを選んで, 以下のパートに分けて話したい. 1)記号変換によって決められるタイル変換 2)タイル変換を用いた,Rauzyフラクタルの構成とタイリング 3)可逆記号変換から生成されるRauzyフラクタルの境界 4)展望
RAIDとは,ディスクの読み込み・書き込みを複数のディスクで並列に行うことに より,処理速度と安全性を高める技術である. アクセスコストを低減するために,RAIDのinformation diskとcheck diskを完全 グラフの辺と頂点に対応させてinformation disk の順序付けを考察する cluttered orderingという概念が,Cohen等(2001)によって導入された. Meller等(2005)は,二次元のRAIDを完全二部グラフに対応させることで, 数理モデル化をおこなった. 今回は,Mueller等の研究をさらに発展させ,完全二部グラフのcluttered orderingの構成法について報告する.
Algebraic shifting とは単体的複体 K から shifted と呼ばれる 特別な性質を持つ別の単体的複体 Δ(K) を作る作用の事である。 Algebraic shifting は組合せ論的観点から Kalai が考案したものであるが、 代数的には generic initial ideal と呼ばれる概念が対応する事が知られており、 近年代数的なアプローチからいくつかの新たな性質が示されている。 一般に generic initial ideal や algebraic shifting は具体的な計算という面で は非常に難しいが、代数的に良い性質を持つ対象は扱いやすい。 Chordal graph は補グラフの edge ideal が linear resolution を持つ という代数的に良い性質を持ち、その algebraic shifting は扱い易い。 本発表では algebraic shifting の紹介とともに、 chordal グラフの algebraic shifting が組合せ論的にどのような形で与えられるか についてお話します。